「貧困は子どもの自尊感情にダメージを与える」。埼玉県で支援を行っているNPO代表の言葉は、問題の本質を端的に示す。希望を奪われた子どもたちは、立ち上がれない。本書は2012年10月に放送された、NHK総合の報道番組の書籍化。
 30代の父親の債務逃れで、1年半の車上生活を送り、学校に通えなかった中学生男子。離婚の末、働き詰めに働いて、恋人との結婚を前に命を絶った母を慕う、通信高校生の女の子。ギャンブル依存の父親にだまされ、ホームレスに陥った25歳の青年。親の挫折が子どもをこの上もない困難に導く。
 その子ども・若者たちが、無料勉強会の大学生ボランティア、たまり場主宰者、スクールソーシャルワーカーといった、まっすぐに向き合ってくれる大人に出会い、社会に居場所を見つけていく。
 急激に広がる子ども・若者の貧困の深刻さを衝撃的に、しかし現状を咀嚼して、分かりやすく伝えている。個人情報の壁に阻まれ、心を閉ざすティーンに心を砕き、対象に迫る取材姿勢が魅力的。

週刊朝日 2014年7月4日号

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