それにしても、そもそもの問題として、彼女のような科学に対して不誠実とも言える態度の研究者が、理研のユニットリーダーという地位にまで上りつめ、またあのような論文が多くの「プロ」を騙すことができたのか不思議でなりません。一部週刊誌の報道による、いわゆるひとつの "不適切な関係"が背景にあったとして、それだけで説明がつくようなものでもないでしょう。
今から9年前に出版され話題となった『論文捏造』は、科学の殿堂・ベル研究所に所属し、超電導の分野でノーベル賞に最も近いといわれたヘンドリック・シェーン氏の論文捏造について迫った1冊です。どうしてあのような捏造が行われたのか、また不正を見抜くことが出来なかったのか等、現代の科学界の構造を浮き彫りにしています。興味深いのは、シェーン氏の捏造も、今回のSTAP細胞論文捏造とまったく同じ構造だという点です。
今回の理研の決定で、一連のSTAP細胞論文捏造問題が幕を下ろすことはないようです。今後、理研では懲戒委員会を設置し、小保方さんや共著者の笹井芳樹発生・再生科学総合研究センター副センター長らの処分を決めることになっています。もちろん、どこまで不正を正すのかはわかりませんが、少なくとも小保方さんのみを「しっぽ切り」するわけではないようです。
再び同じ過ちが繰り返されないよう、適切な処分と再発防止のための抜本的な構造改革が必要かもしれません。