子供から大人まで大人気、日本人の国民食としてすっかり定着しているカレーライス。そんな(日本の)カレーの発祥地として知られる神奈川県横須賀市では、4月19日に「護衛艦カレーナンバー1グランプリ in よこすか」が開催されました。会場になった海上自衛隊横須賀地方総監部では、全国から集結した15隻の護衛艦・潜水艦の給養員(調理員)が腕を振るい、艦ごとに特色を出したカレーを販売。ふだん乗組員が食べているのと同じ味が楽しめるという事で話題を呼び、入場制限が行なわれるほど人々が殺到したのだとか。見事、グランプリに輝いたのは横須賀潜水艦部隊「濃厚味わいカレー」。名前からして美味しそうですよね。
そもそも日本のカレーライスは旧日本海軍が「発明」したもの。栄養価の高い英国式のスープに改良を重ね、日本人好みにとろみをつけて白米にかけたあのスタイルが出来上がったそうです。その後、兵役を終え横須賀から郷里に返った旧海軍の兵士達がカレーライスを日本全国に広めたとも言われています。
ところで、実はカレー以外にも、海軍発信の料理があるのをご存知でしょうか? 本書『帝国海軍料理物語―「肉じゃが」は海軍の料理だった』では、タイトルが示す通り、家庭料理としておなじみの「肉じゃが」にも海軍が深く関わっているという説を紹介しています。
「肉じゃが」の誕生には諸説ありますが、ここでは東郷平八郎に由来するという説を取り上げています。
東郷と言えば、日露戦争でバルチック艦隊を打ち破った海軍司令官。ある時、英国留学時代に味わったビーフシチューが忘れられなかった東郷は、料理長に命じて、これを作らせることにしました。ところがこの料理長はビーフシチューのデミグラスソースを知らなかったので「牛肉、にんじん、たまねぎ、じゃがいも」という東郷の説明を頼りに作ったのが、砂糖と醤油で煮込んだ肉じゃがだった! ......というのです。
しかし、いくらなんでも料理長がデミグラスソースを知らないなんて、ちょっと考えにくいですよね。また、肉じゃがという名前が定着したのは東郷の時代のようですが、「牛の煮込み」「甘煮」のように牛肉を甘辛く味付けした、肉じゃがに似たような料理はもっと前の時代からありました。当時の海軍ではデミグラスソースの材料が手に入らなかったため、ビーフシチューの材料で、兵士が食べやすいような馴染みのある味付け、すなわち砂糖と醤油で作ったのが肉じゃがだった、というのが真相のようです。
「牛肉、にんじん、たまねぎ、じゃがいも」という材料は、調味料だけ変えればカレーも肉じゃがも両方作ることができます。そのため補給にも都合がよく、海軍食として普及したようです。国民食として定着しているカレーと肉じゃが。その意外な歴史を探る一冊として手に取ってみてはいかがでしょうか。
【参考サイト】
第2回護衛艦カレーナンバー1グランプリinよこすか
http://cocoyoko.net/event/goeikancurry.html