ジャーナリストの田原総一朗さんは、韓国が発表した元徴用工問題の解決策を支持し、日韓関係の回復に期待を寄せる。
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韓国政府が3月6日、元徴用工をめぐる訴訟問題について、日本企業が命じられていた賠償分を韓国の財閥が肩代わりする“解決策”を正式に発表した。日本政府は、歴代内閣が示してきた植民地支配への「反省とおわび」の継承を表明した。日韓関係の改善に向け、やっと政治的な決着が図られることになったのである。
元徴用工たちへの賠償問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済みとなっていて、訴訟については「韓国国内の問題」と位置づけられていた。だが、当時の韓国は大変貧しく、日本から資金援助などを受けるために、不満いっぱいではあるが日本に同意せざるを得なかったのである。
朴正熙政権下の73年、金大中氏が日本でさらわれ、殺されかけた、いわゆる「金大中事件」が起きた。私は彼を「救う会」のメンバーとなり、親しくしていた。金氏が大統領になったとき、当時の首相の小渕恵三と金両氏に「日韓で対等の首脳会談をやるべきだ」と求めた。私が求めただけでなく、両政府の何人もが求め、何よりも小渕、金両氏が主体的に強く望んだためだろうが、対等の首脳会談が実現した。
首脳会談でいくつもの重要な問題が議論されたはずだが、元徴用工問題も話し合われ、賠償問題は韓国側が取り組むことで一致した。
しかし、文在寅大統領政権時に韓国経済が悪化して、政権支持率が大幅に下落した。
支持率を上げるためにどの権力者もが考えるのは、前政権の大きな政策を否定することだ。文氏は朴槿恵前政権が日本と結んだ「最終的かつ不可逆的」解決をうたう日韓合意を強く否定した。だが支持率は上がらなかった。
そこで元徴用工問題で賠償分を日本企業が負担すべきだと表明し、支持率を上昇させたのである。
ところが、これに対して日本は、安倍晋三首相(当時)の首席秘書官であった今井尚哉氏を中心に韓国への経済制裁を連発した。