自信と余裕に満ち溢れた意欲作 / 『マン・オブ・ザ・ウッズ』ジャスティン・ティンバーレイク(Album Review)
自信と余裕に満ち溢れた意欲作 / 『マン・オブ・ザ・ウッズ』ジャスティン・ティンバーレイク(Album Review)

 故マイケル・ジャクソン以降で“キング・オブ・ポップ”を名乗れるのは、ジャスティン・ティンバーレイクくらいではないだろうか。11歳でオーディション番組に参加し、一世を風靡したアイドル・グループ=イン・シンクからソロに転身、俳優業も成功させるなど、デビューから現在に至るまでの経過も似ている。

 そんな天下無敵(?)、次世代の“キング・オブ・ポップ”ことジャスティン・ティンバーレイクのおよそ4年半振り、通算5作目となるスタジオ・アルバム『マン・オブ・ザ・ウッズ』は、過去4作にあった要素も含みつつ、最先端の音を取り入れた意欲作。もう怖いものはないと言わんばかりの自信と余裕に満ち溢れている。

 ここ最近の活躍といえば、2016年に全米No.1を獲得したミュージカル映画『トロールズ』の主題歌「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」の大ヒットが記憶に新しいが、それはそれ。同曲のような万人受けするアメリカン・ポップスとは一線を置き、全く違うテイストのアルバムに仕上がっている。

 例えば、ティンバランド&デンジャのゴールデン・コンビが手掛けた先行シングル「フィルシー」では、ラップのような歌い回しでシャウトしたり、ミュージック・ビデオで故スティーブ・ジョブズになりきってみたりと、ユニークな展開を披露。ファレル節全開の「ミッドナイト・サマー・ジャム」~ロック要素を含んだティンバ独特のダンス・チューン「ソース」と、冒頭3曲は難易度の高いエレクトロ・ファンクが並ぶ。これらを歌いこなす、黒人のグルーヴ感と白人のバランス感覚、どちらも持ち合わせたジャスティンの歌唱力に感服。

 両者のフリーキーなボーカルが重なり合う、聴き心地抜群の「モーニング・ライト」はアリシア・キーズと、アルバム・リリース直前に発表した「セイ・サムシング」では、カントリー界からクリス・ステイプルトンと、それぞれデュエットしている。フィーチャリング・アーティストの特性を活かしつつも、彼ら“らしくない”ナンバーをもってくる演出がニクい。今をトキめく人気ラッパーたちではなく、彼らのような中堅の実力派を起用しているのも、ジャスティンなりの拘りか。

 ポップでお洒落感たっぷりなミッド・チューン「マン・オブ・ザ・ウッズ」から、アコースティック・ギターがアクセントになっているラテン調の「ハイアー・ハイアー」、2000年代初期のファレル・プロデュースを彷彿させる「ウェイヴ」~「サプライズ」を前半に、後半には、ハワイアンのようなリラックスしたムードを演出する「フランネル」や、80'sディスコ風の「モンタナ」~「ブリーズ・オフ・ザ・ポンド」、スペイシー・ファンク「リヴィン・オフ・ザ・ランド」と、ザ・ネプチューンズによるプロデュースが、それぞれ4曲続く。彼らとジャスティンの相性が良いのは言うまでもないが、それが色濃く出過ぎたことで、若干クドく感じてしまう。もう少し、違うプロデューサーによる楽曲があった方が、マンネリ化しなかったかもしれない。前作『20/20 エクスペリエンス』にも参加した、ロブ・ノックスとジェローム・“J・ ロック”・ハーモンによるプロデュース曲「ザ・ハード・スタッフ」~「ヤング・マン」の流れは完璧。

 アルバムを通しては、ちょっと責めすぎた感も否めないが、“年相応”のパフォーマンスとカッコ良さを、きちんと表現できる人だなぁということを、あらためて実感させられたアルバム。そして、今なお現役バリバリ。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『マン・オブ・ザ・ウッズ』
ジャスティン・ティンバーレイク
2018/2/2 RELEASE
2,700円(tax incl.)