『La Maritza』シルヴィ・バルタン
『La Maritza』シルヴィ・バルタン
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『あなたのとりこ~アンソロジー』シルヴィ・バルタン
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『夢のアイドル』シルヴィ・バルタン
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『Les Annees Rca』 [DVD] ※動くシルヴィ・バルタンもどうぞ。
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 正直言って、わたし、バルタン星人です。という書き出しを思いついて調べていたら、今回紹介するシルヴィ・バルタンのコンサート主催者のサイトで、バルタン星人の誕生秘話が掲載されているのを発見した。

『ウルトラマン』の脚本を書き、監督もしたバルタン星人の生みの親とでもいうべき飯島敏宏さんとウルトラマンのヒロイン、科学特捜隊のフジ・アキコ隊員・桜井浩子さんの対談で、シルヴィ・バルタンとバルタン星人が無関係ではないことを知った。それどころかシルヴィ・バルタンは昨年2013年に来日公演を行ったときには、アンコールの後にバルタン星人から花束を受け取ったことも知った。2人(?)の2ショットの写真も見た。みんな思うところは同じなのだなと思ったが、実際に2人を会わせてしまうところまで行くのは、シュールで楽しい。

 わたしがシルヴィ・バルタンを知ったのは、1970年の大ヒット《悲しみの兵士》だった。それにあわせて過去のヒット曲もリバイバルし、《アイドルを探せ》や《あなたのとりこ》《想い出のマリッツァ》などの曲も、ラジオで頻繁にかかっていた。

 今回の主催者サイトのシルヴィ・バルタンの写真は、当時販売されていたレコードのベスト盤の写真と同じものだ。日本のファンは、今でもあの頃のシルヴィ・バルタンを求めているのだろう。

 同じころに、フレンチ・ポップスのブームがあった。
《オー・シャンゼリゼ》のダニエル・ビダル、《夢見るシャンソン人形》のフランス・ギャルなど、ほんとうにお人形さんのようで、同じ中学の同級生の女子たちとは、違う生き物のように思えた。
 男性歌手も、《シェリーに口づけ》のミッシェル・ポルナレフや《雪が降る》のサルバトーレ・アダモなどが好きだった。ポルナレフもアダモも自作自演であり、フランスにも新しい潮流が来ていることを感じさせた。特にアダモは《サン・トワ・マミー》や《ろくでなし》などヒット曲も多く、越路吹雪が紅白歌合戦などでも歌ったこともあり、広く知られた。

 ダニエル・ビダルやアダモは当時から来日し、コンサートなどを披露していた。特に、ビダルは日本でデビューした歌手で、テレビなどでもよく見かけた。
 ミッシェル・ポルナレフの話題で言えば、コンサートのポスターに自分のお尻を出した写真を使って、公序良俗に反するとして罰金を取られた、といったことが話題となったりした。もともと奇行が話題となった人ではあったが、今回、ネットで彼の画像などを検索して、白いふちの濃いサングラスとチリチリなロング・ヘアーであったことを思い出した。

 その後、わたしはシャンソンを聴くようになり、《愛の讃歌》のエディット・ピアフや《枯葉》のイヴ・モンタン、《黒いワシ》のバルバラなどを聴くようになった。歌人の塚本邦雄がシャンソンへの愛を書いた『薔薇色のゴリラ』などを読み、遠きパリの空の下を思ったりしていた。シャンソンの古典なども聴くようになっていった。
 一方わたしは成人するころには、フレンチ・ポップスはあまり聴かなくなっていた。しかし、シルヴィ・バルタンは活躍し続け、大きなコンサートで成功した話や、ディスコ音楽を取り入れたり、ダンスなども話題になっていた。

 今でも覚えているのだが、1984年、ぴあに入社してまもなくのころ、銀座に「プランタン銀座」ができて、そこにチケットぴあの直営店を作ることになり、何度か足を運んだ。そこで見たのが、最上階にあった「シルヴィ・バルタン・ダンス・スタジオ」だった。プランタンの担当者に「シルヴィ・バルタンが教えてくれるんですか?」という馬鹿な質問をしたことを覚えている。

 いつものことであるが、シルヴィ・バルタンやフレンチ・ポップスについて書こうと思うと、その情報はインターネットで調べることになる。
 しかし、インターネットができる前というのは、音楽関係の情報というのは、音楽雑誌や新聞、テレビ、ラジオくらいのものだった。だからミッシェル・ポルナレフがお尻を出したポスターを貼って、罰金を取られたといわれても、そのポスターをすぐに見ることはできなかった。シルヴィ・バルタンが、何年生まれで、どんな料理が好きで、両親がどんな経歴の人たちなのか、といったことは、たぶんレコードのライナー・ノーツが一番の情報源だったと思う。だからレコードを買って、ライナー・ノーツがなく、歌詞だけだったりすると、ひどくがっかりしたものだ。

 今では、誕生日どころか日本のテレビに登場した回数やその内容まで知ることができる。それどころか、10代のシルヴィ・バルタンの映像も簡単に観ることができる。便利な時代になったものだ。
 今夜は、フレンチ・ポップスでも聴きながら、10代のころを思い出してみよう。[次回3/26(水)更新予定]

※今回紹介したアルバムは、ジャケット写真優先で選びました。

■公演情報は、こちら
●東京
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8875&shop=1
●大阪
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8881&shop=2

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