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強く、具体的なメッセージを込めたアルバム『リヴィング・ウィズ・ウォー』と、その想いをより直接的に伝えるために実現させたCSNとのツアーを終え、2007年を迎えると、ニールはふたたび親しい音楽仲間たちとスタジオに入った。このとき彼が声をかけたのは、ベン・キース、ラルフ・モリーナ(ドラムス)、リック・ロサス(ベース)の3人。クレイジー・ホースからモリーナだけを呼び、80年代後半からニールのサークルに加わったロサスと組ませた、興味深いラインナップだ。プロデュースは、ニールとニコ・ボラスとのザ・ヴォリューム・ブラザーズ。サウンドやビートの方向性を限定せず、思いつくままに現在の自分(つまり60代になった自分)を描くことが目的だったという。
70年代の半ば、30歳のニールは、同じようなスタンスでデイヴィッド・ブリッグスとアルバムを仕上げている。さまざまな事情から未発表のままで終わっているのだが、そのとき、周囲の勝手な思い込みもあって、なんとなくそう呼ばれるようになった仮タイトルが『クローム・ドリームス』だった。深い意味のある言葉ではなく、自動車をめぐるブリッグスとのジョークから生まれたフレーズだったらしい。
つまり『クローム・ドリームス』というアルバムは公式には存在していないわけだが、長い時の流れをへて、同じようなコンセプトとスタンスでつくり上げたアルバムとして、ここで彼は『クローム・ドリームスII』というタイトルをつけたようだ。
泥臭いカントリーから、レスポールの音を中心に据えたハードな曲まで、たしかにこのアルバムでは、方向性を限定しないというコンセプトがしっかりと貫かれていた。そのうえで、「母なる大地と自動車への愛の両立」を通奏テーマのようなものとして、自分を描ききっている。
ハイライトは、フランク・サンペドロ、チャド・クロムウェル、6人の管楽器奏者も加えた大編成で録音した《オーディナリー・マン》。18分に及ぶこの大作は、すでに80年代末には書き上げられていたもので、「世に出る時期を待っていた」のだという。[次回3/12(水)更新予定]
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