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2006年5月にアルバム『リヴィング・ウィズ・ウォー』をリリースするとすぐ、ニールはツアーの準備に入った。もちろんレコーディングに参加したミュージシャンたちとそのままツアーに出てもよかったわけだが、大切なメッセージを込めたアルバムであり、その想いをより広く伝える必要がある。大統領選挙も間近に迫っていた。おそらくそのように考えてのことだと思うが、ニールはクロスビー、スティルス、ナッシュの3人に声をかけ、CSNYとしてのツアーを実現させてしまう。
さらにはそのドキュメンタリー映像を制作し、サウンドトラック盤という扱いで、CSNYとしては『4ウェイ・ストリート』(71年発表)より約10年ぶりとなるライヴ・アルバムをつくり上げたのだった。
2006年7月から9月にかけて行われたツアーでバックを努めたのは、ベン・キース、チャド・クロムウェル、リック・ロサス、スプーナー・オールダム。全員ニール一派といっていいだろう。プロデュースと映像制作もニール本人。繰り返すが、重要なプロジェクトを成功させ、より強いインパクトとともにメッセージを伝えるため、ニールはCSNと合流したわけである。
選曲も徹底したもの。ニールの7曲9ヴァージョンはすべて『リヴィング・ウィズ・ウォー』からのものであるのに対して、CSNの曲はいずれも『4ウェイ・ストリート』以前のものなのだ。だが、ただ単に代表的な曲をノスタルジックに歌っているのではなく、たとえば《デジャ・ヴ》、《フォー・ホワット・イッツ・ワース》、《ミリタリー・マッドネス》、《ファインド・ザ・コスト・オブ・フリーダム》、《ティーチ・ユア・チルドレン》といった名曲が、まさに2006年夏のアメリカで歌われるべき歌として甦らされている。やはり、すごい人たちだ。4人とも社会的なスタンスがまったく同じということではないはずだが、それでも、ニールのパワーと想いが彼らの心をまとめ、こうして一つの声を発信することができたのだろう。[次回3/4更新予定]
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