芝浦工業大学で学ぶ女子学生(大学提供)
芝浦工業大学で学ぶ女子学生(大学提供)

 東工大に先立って「女子枠」を導入した芝浦工業大学は、「確かな手応えを感じている」(担当者)という。

 同大は18年、特に女子が少なかった工学部機械・電気系4学科で、女子向けの公募制推薦入学者選抜を始めた。導入の背景と経緯をアドミッションセンター長の新井剛教授が振り返る。

「OECDのデータを見ても、日本の理系女性の活躍度は世界平均からほど遠い。そのような状況を生み出す『1丁目1番地』が工学部で、まずはここから変える必要があると感じました」

 制度の導入にあたり、女子を優先的に受け入れることは「逆差別」になるのではないかと反対する声も学内にあった。

「弁護士からは『男女差に極端な偏りがある中で優先枠を作ることに法的な問題はない』と助言をいただきました。学内に対しても、女子学生が増えることでどのような効果が期待できるかを丁寧に説明しながら導入を進めました」(新井教授)

 その後、対象を広げ、22年には工学部全9学科、23年入試では全学に女子推薦枠を設けた。21年時点で11人だった志願者は、22年に37人、23年は98人にまで増えた。

 また、一般選抜で成績上位の女子約100人に奨学金を給付したり、山脇学園高校や昭和女子大学附属昭和高校などの女子校と連携してインターンシップを開催したりと、女子学生を増やす対策を次々と打ち出している。

「これまで工業大学というと油まみれで歯車がまわっているような、グレーに近いイメージがあったと思います。それが、女子が増えると、まず学内の雰囲気が一気に明るくなりました。何かデバイスを作るにしても、女子にとっての使いやすさなど、これまでにはない目線の発想が出てくるようになった。今まではそのような意見を吸い上げる場すらありませんでしたので、学校自体の進化につながったと思っています」(同)

 ただ、国内の大学における「女子枠」導入の道のりは平坦ではなかった。大学ジャーナリストの石渡嶺司さんは言う。

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