2000年の春、54歳のニール・ヤングは『シルヴァー&ゴールド』とタイトルされたアルバムをリリースしている。収録曲10曲は、一部の例外を除くと、90年代の後半、さまざまなプロジェクトに取り組みながら書きためてきたものだという。50代前半のニールのなかから生まれた歌たちといっていいだろう。
ミレニアムというきわめて大きな時代の節目をニールが意識したかどうかはともかくとして、ここで彼は、クレイジー・ホースと組んでレスポールを鳴り響かせるのではなく、ベテランの実力派ミュージシャンたちとともにアコースティック・ギター中心のゆったりとした音を聞かせることを選んでいる。具体的には、『ハーヴェスト』以来つねに寄り添う形で彼の創作活動を支えてきたベン・キース、ディランの30周年コンサートをきっかけに関係を深めてきたジム・ケルトナーとドナルド・ダック・ダン(MGs)、マッスルショールズで幾多の名作に貢献したスプーナー・オールダムといった面々。リンダ・ロンシュタットとエミルー・ハリスもヴォーカルで参加している。
全体的なサウンドの感触は、『カムズ・ア・タイム』、『オールド・ウェイズ』、『ハーヴェスト・ムーン』の流れを汲むもの。低音弦のうなりもきれいに生かしたマーティンとキースのスティール・ギターを中心につくり上げられた音がなんとも気持ちよく、穏やかな印象とともに心に伝わってくる。声を張り上げるような曲もほとんどない。あの時期、ごく自然な流れで、そういうタイプの曲が実を結んでいったということなのだろう。
『ハーヴェスト・ムーン』あたりから妻ペギへの愛がニール・ヤング作品のメイン・テーマの一つとなっていったわけだが、ここに収められた「レイザー・ラヴ」という美しい曲は、まさにその典型的な例。また、「僕らは若く、誰が悪かったわけでもない。もう一度トライできないだろうか」とバッファロー・スプリングフィールドへの想いを歌う興味深い曲も収められている。本格的なリユニオンまでにはさらに10年の歳月を必要としたわけだが。[次回1/20(月)更新予定]