レンコは11歳。京都の小学6年生だ。今日、とうさんが引っ越しをする。私のおうちが二つになります──。突然両親が離婚した少女が見つめる家族の姿と、さまざまにゆれる心の内を乾いたユーモアで描く児童文学。
世間で言う家庭の不幸もなんのその、母と決めた「三引く一の生活」のルールに「イエッ! 私たち愛しあってるゼ!」と書き、両親の後輩で気の優しい布引君に「わかってないなあ」と生意気な口をきく。大人のつまらないセンチメンタルなんぞおよびじゃない、子供はタフな生き物だということを思い出す。
だが彼女は「バーカ」を連発する。目を見てくれない父に「バーカ」、父の名がない表札に「バーカ」。「女の子だからお手伝いもカルイカルイ」と能天気に励ます教師にもムカムカ。言葉にならない心のグルグルとひとり格闘する姿に、そうだ、わかるぞと声が出る。
本書は91年の椋鳩十児童文学賞受賞作。復刊に際し、35歳のレンコと親友二人の「あと話」を新たに収録、「力が入りすぎ」のあの頃を力に変え、強く成長した子供たちの語りにじんわり胸が温かくなる。
※週刊朝日 2014年1月17日号