『ドリーミン・マン・ライヴ ’92』ニール・ヤング
『ドリーミン・マン・ライヴ ’92』ニール・ヤング
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 ごく初期は別にするとして、ニール・ヤングは、公式/非公式を問わずほとんどのライヴを音源として残してきたそうだ。彼の創作活動の本拠地でもあるカリフォルニア州ウッドサイドのランチでは、呆れてしまうほど大量のテープが大切に補完されているに違いない。そこから厳選されたものが、近年、アーカイヴス・パフォーマンス・シリーズなどで段階的に公開されてきたのだ。

 同シリーズのVol.12として2009年暮れにリリースされた『ドリーミン・マン・ライヴ’92』は、1992年1月から11月にかけて全米各地で約60回行なわれたソロ・ツアーからピックアップした10曲を収めたもの。時間的な流れを振り返っておくと、豪快にレスポールを轟かせて健在ぶりを示した『ラグド・グローリー』と『WELD』から一転、アコースティックな音にこだわった『ハーヴェスト・ムーン』は91年の秋から92年2月ごろにかけて録音され、同年秋に発表されている。つまり、その仕上げの作業と並行して彼は、たったひとりで長期のツアーを展開していたわけだ(使用楽器は、アコースティック・ギター、ピアノ、6弦バンジョー、ハーモニカ)。

 すでに何度か書いてきたとおり、ニールは、録音作品としてはまだファンに届けられていない曲でコンサート・プログラムを固めてしまうことがある。彼にとってそれは、冒険でも、暴挙でも、なんでもないことなのだ。92年に関していえば、大半は『ハーヴェスト・ムーン』としてようやくツアー終盤に世に出ることになる曲で、そこに「ロング・メイ・ユー・ラン」や「シュガー・マウンテン」、「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」などが加えられるという内容だった。

 『ドリーミ~』は、そのなかから『ハーヴェスト・ムーン』収録曲だけを抜き出し、本編とはまったく流れを変え、録音中に並べるという構成がとられている。ひとりだけで弾き語ることによって、それぞれの曲に込めた想いをさらに明確な形で描き出した、もうひとつの『ハーヴェスト・ムーン』といっていいだろう。[次回11/18(月)更新予定]

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