米国で130万部を売り上げたというエッセイ集。著者は「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の監督・脚本を手がけたことで知られるロマンティック・コメディの名手だ。しかし、ふだんの彼女はどうもロマンスは苦手のようで、ずいぶんとコメディ寄りの人生を歩んでいる。
小物でぐちゃぐちゃになってしまう「ハンドバッグ問題」は、交通博物館で買った26ドルの「単なる袋」を使うことで解決、髪の毛のブローはサロン任せ。たまにロマンスの香りがしてきたな……と思っても「ケネディのホワイトハウスで働いた若い娘のなかで、大統領が手を出さなかったのは、どうやら私だけらしい」というオチが待っている。彼女の母が繰り返したという「すべてはネタなのよ」という言葉を遵守するかのようだ。
加齢による首のシワを気にして、老いを肯定する本に対し「この人たちに首はないのか? 首が隠れる服を探すのに苦労したことはないわけ?」と斬り捨てるくだりが堪らない。サバサバ、毒舌、ズボラ。しかし最高にチャーミングだ。
※週刊朝日 2013年11月1日号