庭に興味はない。庭園に行く趣味もない。龍安寺の石庭って言われても、とんとその良さはわからぬ。しかし小学生の頃に授業で箱庭をつくった時は楽しかった。小さい橋とか架けたりして。庭とも言えないような空き地の風情に心奪われることもある。ということで、日本の十大庭園について紹介&解説した本を読むことにする。10個の庭園は、有名なのも、聞いたことすらないのも交じっている。いくつかは実際に行って見たこともある。
 いやー、見てつまらんと思ってた庭もよく見えてくる! 写真もいい。白黒の写真が挟まれるだけなんだけど、見ていると「小学生の時に、箱庭で山をつくったり橋を架けたりした時のわくわく」が鮮烈によみがえってきました! そうそう、こういうのがつくりたかったんです。作庭って、箱庭づくりと同じことだよな。そういえば私、富士塚が大好きなのだが、庭の中に山や川や滝を再現しようというのと、富士山を再現しようというのは同じことじゃないですか。
 読み進めると、作庭についての決まり事がいくつも出てきた。先日読んだ冷泉(れいぜい)家の本に、和の文化とは決まり事を共有して異を唱えないこと、と書いてあって唸らされたばかりだったので、その決まり事についても熱心に読んでしまった。まあ、どんなに読んでも、決まり事はやっぱりつまらなくて、「縮景(しゅっけい)」という、自然の有り様を庭に再現することのほうがわくわくする。
 紹介されてる庭園では、福井の一乗谷朝倉氏(いちじょうだにあさくらし)遺跡庭園群の「諏訪館跡庭園」がだんぜん欲しい庭である。自分ちの庭にこれを持ってきたい。でも庭というのは、与えられた敷地の地形にしたがって庭園を築くので、持ってくるのはムリなのである。そもそも名庭園は金持ちじゃないとつくれない。一乗谷朝倉氏遺跡庭園群は、信長に滅ぼされて土に埋まっていたということで、敗れた者の庭なのだ。そのへんが京都の名庭園よりも心惹かれる理由かも。

週刊朝日 2013年10月18日号