『ライヴ・ラスト』ニール・ヤング
『ライヴ・ラスト』ニール・ヤング
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 1978年9月半ばから10月末まで、ニール・ヤングはクレイジー・ホースと全米ツアーを行なっている。タイトルは「ラスト・ネヴァー・スリープス」。すでに書いたとおり、翌年夏にリリースされたアルバム『ラスト・ネヴァー・スリープス』の後半は、そこで残された音源にオーディエンス・ノイズ除去や若干のオーヴァーダブなどの処理を施したものだった。これもまたすでに何度か書いてきたことだが、ニールは、誰も知らない曲でも臆することなく、もちろん遠慮することもなく、コンサートで聞かせてしまう。ロード・テストといった感覚ではなく、彼は、きちんとしたヴィジョンを持ち、確信的にそういう姿勢やスタイルを貫いてきた。しかも、あらためて書くまでもなく、インターネットはまだ想像のはるか彼方にあった時代のことなのである。

 曲構成だけではない。ニールは、巨大なギター・アンプやマイクを置き、ローディやスタッフたちには『スター・ウォーズ』からインスパイアされたものと思われる衣装を着せるなど、ステージ演出にもこだわった。セット・チェンジの間には、ウッドストックでのあの「ノー・レイン」チャントが流されたりもしている。また、音量へのこだわりも半端ではなく、招待客のなかには耐えきれずに途中で席を立ってしまう人も少なくなかったという。

 79年11月に発売された『ライヴ・ラスト』(当時は2枚組。CD版はシングル・ディスク)は、曲順も含めて、その画期的なコンサート・ツアーのほぼ全貌を伝えてくれるものだ。

 オープニングは12弦アコースティック・ギター弾き語りの「シュガー・マウンテン」で、「アイ・アム・ア・チャイルド」、「マイ・マイ、ヘイ・ヘイ(アウト・オブ・ザ・ブルー)」など同じく弾き語りの4曲がつづく。オリジナル版でいうと、ここまでがディスク1のサイド1で、このあとは、「ザ・ニードル・アンド・ザ・ダメージ・ダン」と「ロッタ・ラヴ」が小休止といった感じで挿入されるが、ニールとクレイジー・ホースは最後までハードかつラウドなパフォーマンスで押し通す。「ザ・ローナー」、「パウダーフィンガー」、「コルテス・ザ・キラー」、「ライク・ア・ハリケーン」、「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ(イントゥ・ザ・ブラック)」など、いずれも、70年代の締めくくりといったことを意識したのではないかと思わせる、強烈なインパクトで迫ってくる。[次回9/9(月)更新予定]

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