若い人も来てくれません。専門大店をもっと拡充すべきでした。
──フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上しているという。ただ、水野さんは三つのハードルを指摘する。
第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。
あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武との信頼関係に大きく影響します。
調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。
──調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか。
■百貨店の役割を理解しているか
私はヨドバシカメラを否定しているわけではありません。大阪の梅田では複合商業施設を運営していますし、必需品を中心にネット販売も大いに結構だと思います。配送態勢がしっかりしていて便利ですから私も時々利用しています。
ただ、百貨店の役割と意味をどれほど理解しているのでしょうか。百貨店はお客様にじっくりと商品を試していただき、店員と商品にまつわる会話を楽しんでいただき、豊かな気分でお買い上げいただく。そうしたプロセスを楽しんでいただく場所です。物質的な充足を得る文明的消費ではなく、心の豊かさにつながる文化的消費を提供するのが役割で、売り方なども含めたクオリティーが問われます。つまり存在意義が異なるのです。