著者が「なんてすごい人なんだ」と感嘆した15人のもとを訪れ、インタビューを行う。なんだかシンプルすぎる企画のようだが、インタビュアーが荒俣宏となれば、話は変わってくる。博覧強記の人である荒俣。その彼が会ってみたいと切望する知的巨人たち。どんな人なのだろう。何を話すのだろう。ハイレベルな会話にわれわれ読者はついていけるのだろうか……何やらただならぬ本である。
 しかし、変に構える必要はない。小気味よいテンポでトークは進み、ときに笑いさえ起こる。「鈴木晃さんと発見するオランウータンの高度な社会」では、志賀高原の地獄谷温泉に入るニホンザルを「私が最初に見つけたんです」という衝撃の告白が飛び出し、「板見智さんと検証するハゲの噂」では「髪がつくられるのは頭皮の表面から7~8ミリ奥で、シャンプーはそんなところまで届きません」とバッサリ。話題は多岐にわたり、まったく飽きさせない。すごい人の苦労話はたくさんあるが、すごい人の愉快な話はなかなかお目にかかれない。その意味でも本書はやはりただならぬ本なのである。

週刊朝日 2013年6月7日号