ブラウン管を通してお馴染み、でもよく考えれば実体不明。そんなテレビコメンテーターという職業を民放番組に出演するコメンテーター(大学教授)が真正面から論じた本である。執筆のきっかけが面白い。著者はある番組で橋下徹・大阪市長の政策を論評し、市長からツイッターで「批判だけのコメンテーターの典型」と返り討ちに遭う。本書は、それを機として考察されたコメンテーターの役割に関する「応答本」でもある。
 各章ではコメンテーターのギャラやなり方など、テレビを見るだけではわからない話題が続く。コメンテーターは単に「わかりやすい説明」を超えて、視聴者側が「何をわかりやすく説明してほしいのか」を察知する力が求められると著者はいう。テーマ選定から説明に至るまで、本書の手際の良さも「さすがコメンテーター」と唸るほかない。
 結論ではテレビというメディアのありかたにも考察が及ぶ。経験を元にしたルポルタージュ的要素もあれば、メディア批評としての要素もあり、読み応え十分の一冊だ。

週刊朝日 2013年5月17日号

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