いま、私の実家には犬がいる。娘の強い希望で春休み中に1週間レンタルしているのだ。料金は9500円。1日につき約1400円で借りられるのだから、かなりオトクだと思う。

 今年になって、犬の1週間レンタルを実施するペットショップが増えているのに気がついた。ペットショップが、引き取り手がないまま大きくなってきた子犬をレンタルしているのだ。飼うのを迷っているのなら1週間ほど借りて犬との相性をみてみませんか、気に入ったら飼えますよというようなことなのだろう。

 なぜ子犬をレンタルする店が増えてきたかというと、おそらく不況でペットを飼う人が減り、犬がお店に残っているからなのではないかと推測している。

 さて私たちは最初、昨年亡くなってしまった実家の犬と同じ背格好(約3キロ)の小型犬を希望していた。それなのに私と娘は、店内で茶色のプードルと目があってしまった。もう1歳になるので身体が大きく、入っているオリがひどく窮屈そうで、身を丸めていた。

 この子を外に出してあげたい。私と娘は即決でこのプードルに決めた。彼はオリから出されたとたん、自分の身長以上かと思うほどに跳躍しまくった。家に連れていっても、久しぶりに自由に動ける喜びからか、うさぎのように跳ねまわり、一時もじっとしていない。

 最初の晩で母が、「前の犬よりずっと大きい(6キロ)し、ちょっと手に負えない」とこぼし、追い回されて疲れた娘は「当分犬はいい」とうんざりしていた。母など返却できないのかと真顔で私に聞いてきたほどだった。
 けれど翌日になると犬も家族も皆落ち着き、娘のひざで眠るくらいなついてきたし、そんな様子に娘もまんざらではなさそうだった。
 仲良くなれて一安心と思っていた2日目の晩、母が私にそっと耳打ちしてきた。

「情が移ったら別れるのがつらいから、明日にでも返してきてもらえない?」

 犬を中途で店に戻すことはできるし、気に入ったらその店の決めた値段で買い取ることもできる。ちなみにこの1歳のプードルは相場の3分の1だという。成長すればするだけ価格が下がっていってしまうのだ。

 さあ、7日目の朝に母が「このままこの犬飼いたいわ」と言い出すといいなと思っているけれど、どうだろう。