消費者に誤解を与える食品表記などの問題を論じた本である。例えば、安い煮穴子の原材料にマルアナゴ、とあったら、それは、日本人が食べてきた穴子とは違う、ウミヘビ科の魚だ(しかし本物のウミヘビは爬虫類で、当然ウミヘビ科の魚ではない)。
 「サケの切り身」と言っても、サケ科には11属あり、味もピンキリ、加えて石油から合成されたアスタキサンチンで身が着色されたニジマスがサーモンとして店頭に並ぶこともある。
 JAS法の生鮮食品品質表示基準、水産庁の魚介類の名称のガイドラインにはいくつもの抜け穴があると著者は指摘する。加えて学者たちが付ける統一感のない和名が混乱を助長する。そういった問題点を平易に解説しつつ、医師である著者は、肉類の感染症や寄生虫の可能性もしっかり指摘する。
 読みやすい語り口で、食材をめぐる「騙し」の手口がすんなりと頭に入ってくる。加えて、食品に関する基礎的な知識を得ることもできる。スーパーなどでの表示に騙されないために、一読をすすめたい。

週刊朝日 2013年1月18日号

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