四川大学で日本文学を学び、さらなる日本文化研究のため来日した著者は、日本の日常に、古代中国に由来する慣習が息づいていることに驚く。
例えば正月に飲む「お屠蘇」。実は、中国ではそんな慣習は既に廃れ、屠蘇酒の名は、古代の漢詩のなかでしか見ることができないのだ。
著者は、まるで古代中国の夢に入り込んだような感覚を覚え、「日本のなかの古代中国」を探し求める。
しかし、同じ「昔の中国のもの」でも、茶の湯で使われる中国製陶磁器の良さが、著者にはわからない。派手さはなく、むしろ粗末に見える。中国の美意識では評価されないであろうそれらがなぜ日本でもてはやされ、一部のものは国宝にまでなったのか。
著者は日本と中国のさまざまな文献を調べつつ、その謎を解いてゆくのだが、その過程が実にエキサイティングである。
隣国の女性研究者の新鮮な目によって、改めて日本文化とは何かを突きつけられる作品である。
週刊朝日 2012年11月9日号