このたびイケメン舞台のオーディションの審査員を務めた。私が脚本を担当しているので審査にも参加させていただいたのだ。

 このオーディションなんと応募者がひとりも欠席することなくやってきた。こういうことは珍しいらしい。まだ脚本も読んでいないのに、彼らは「ぜひこの舞台に出たい」と熱心に言ってくれる。ありがたいことだと思うと同時に新米脚本家としてかなりのプレッシャーも感じた。果たして私が書いた脚本を読んでも、彼らは「ぜひ出演したい」と思ってくれるだろうか......。

 当日、私は年末進行の途中で会場に向かった。毎日深夜まで原稿と格闘しているので、お肌はぼろぼろ、目の下にはクマまでできていた。舞台のオーディションは数時間にも及んだ。面接しても面接しても、次から次へとこれでもかとイケメンさんが現れた。

 同席しているプロデューサーさんと演出家さんが時間が経つにつれてどんどん弱り、声も小さくなっていくのに、私だけはどんどん元気になっていった。それはそうだ、イケメンさんがこちらににっこりと笑いかけてくれるのだ。こちらも笑顔にならなくてどうするのだ(たとえ彼らが役が欲しくて媚びでスマイルを送ってきたのだとしても)。

 オーディション終了時には、プロデューサーさんからは「なんか肌がツヤツヤになってない?」と怖がられた。好みの男を前にすると女性ホルモンが大量に分泌されるからか若返ると言われているけれど、これは本当のことなのかもしれない、とつるつるほっぺを撫でながら考えた。

 オーディション参加者に私は今回ささやかなプレゼントを用意した。サンタのチョコレートだ。合計で5700円。大勢が参加したのでひとつひとつの価格はささやかだけれど、寒いなか足を運んでいただいた御礼の気持ちを伝えたかったのだ。皆「審査員からプレゼントもらうなんて初めて」と驚きつつも喜んでくれたので、まあ、よかった。

 その中のひとりが「僕は何もお返しを持っていないけれど、いい仕事をしてお返しできればと思います」と言った。
 彼はオーディションに合格した。このセリフが原因で受かったわけではないけれど、この彼がどんな演技をしてくれるか、とても楽しみにしている。

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