
ジャーナリストの田原総一朗さんは、沖縄返還協定におけるスキャンダルについて後悔を明かす。
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元毎日新聞記者の西山太吉氏が、2月24日に心不全のために91歳で死去したことを各新聞の報道で知った。
西山氏は毎日新聞で外務省を担当していた1971年、ものすごい記事を書いた。沖縄返還協定の際、米国が沖縄に支払うべき軍用地原状回復補償費400万ドルを日本が内密に肩代わりしていたとする機密情報を報じたのである。
当時、社会党の衆院議員であった横路孝弘氏は、西山氏が報道した電信文について衆院予算委員会で発表した。西山氏が入手した電信文そのものを、である。全マスメディアが報じたすさまじい出来事であった。
私は当時、テレビ東京でディレクターをしていたのだが、その出来事を報じなかった。そのことを大いに後悔しているのだが、ちょうどそのとき重大な作業に専念していたのである。
私は、当時自民党の代表的な論客であった宮沢喜一氏とある取材で大論争をしていた。
日本国憲法と自衛隊は大矛盾している。憲法9条2項で、日本は戦力を保持せず、国の交戦権は認めないと明記している。にもかかわらず、自衛隊は明らかに戦力を保持していて、交戦権も有している。なぜこのような大矛盾が生じたのか。
憲法を押し付けたのも、自衛隊を押し付けたのも米国である。憲法を押し付けたのは戦争直後で、米国は日本を弱い国にしておきたかった。だが、朝鮮戦争が起きて、米国にとって都合がよい程度に強い国にしようとした。つまり米国の対日戦略が大きく変わったのである。
自民党が発足したのは、自衛隊が生まれた翌年の1955年だが、初代首相の鳩山一郎氏は大矛盾をなくすために、憲法改正を主張し、岸信介首相も同様に訴えた。
両者ともに憲法改正を実現することはできず、続く池田勇人、佐藤栄作両氏に憲法改正に真剣に取り組む姿勢は見られなかった。私は宮沢氏に「池田、佐藤両氏は国民にうそを押し付けている。国民をだましている。こんな首相は辞めるべきだ」と強く訴え、大論争になったのである。