小学3年生の娘を理科実験教室に通わせている。諸費用を入れると月々1万数千円もかかる。
これは息子も実験教室に通っていたために、惰性のように娘も通わせているわけで、果たして彼女の適性にフィットしているのだろうか、とこのごろ考えていた。
娘は絵を描くことが大好きで、最近ではお話も考え、ストーリー漫画を作って楽しんでいる。人からも「明らかに文系」と言われているのに、理科実験教室という選択でいいのだろうか。
当の娘は楽しがり、これからもずっと通いたいと言う。電車で1時間もかかるほど遠いのに、いやだとは決して言わない。でも、私は子どもには自分の才能を思い切り伸ばしてもらいたいと考えている。
息子の時はラクだった。息子をアイドルにしたい私がヒップホップ教室に通わせようとしたことがあったが1ステップたりとも踊ってはくれず、けれど算数教室のプリントにはせっせと励み、小学3年にして中学教材を終えてしまった。これなら親も「あっ、この子は理数系なのね」と簡単に判断できる。
しかし娘は複雑だ。理系に進学する気はないのに実験教室は好きなのである。しかも彼女ときたら、絵画教室をやめてまで理科実験教室を選んでいるのだ。それなのに家では毎日何時間も絵ばかり描いている。
「そんなに絵が好きなら絵を習えばいいのに......」
と首を傾げる親の気持ちをよそに、娘はこの夏、カンカン照りの日も真っ直ぐな足取りでお教室に通った。
しかし先日、教室から出てきた娘が、輝いた顔で私に何かを差し出した。手作りの万華鏡だった。
「すごくきれいだよ!」
彼女はうれしそうにいつまでもいつまでも、それを覗き、移り変わる模様に歓声をあげた。それを見て、私は気づいた。彼女にとって、このお教室こそアートだったのだと。
この世には様々な形状がある。天の星の動き、蝶の模様、それからそういえば先日は磁石にくっつく砂鉄の動きにじっと見入っていた。娘は実験教室で自然界からデザインを教わっていたのだ。それは絵画教室に通うよりもずっと強い刺激を彼女に与えてくれていたのだろう。
娘の趣向が初めて理解できた、うれしい一瞬だった。これからもしばらくは、男の子がほとんどのこの教室に、娘が目をきらきらさせて通うことだろう。