廣瀬陽子教授(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
廣瀬陽子教授(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 早い時期に将官クラスが次々とウクライナ軍によって殺害されたことも、プーチン大統領にとっては大きな誤算だったはずです。将官クラスは通常は前線には出ないものですが、兵士の士気が上がらず、戦い方がグダグダなので仕方なく前に出て殺されてしまったとも聞きます。とはいえ、将官が前線に出たとしても、その動きが事前に察知されなければ防御できたはず。つまり、ロシア側の情報がウクライナ側に筒抜けだった。アメリカは衛星などをフル活用し、ロシア軍の動きをつぶさに追って得た情報を30分から1時間でウクライナに全て伝えたそうです。また、ウクライナは企業レベルでも衛星情報をたくさん集め、さらにドローン義勇兵からの情報も活用できました。だから、待ち構えて攻撃することができたのです。

 そう、今回の情報戦ではドローンの存在が極めて象徴的です。今回、ウクライナはドローン義勇兵を募集し、国内外の一般人が自機で戦闘に参加できるようにしました。軍事ドローンとは違い一般のドローンは小型で軽く、言ってみれば蚊がフワフワと飛んでいるようなもので、ロケットでも撃ち落とせない。衛星よりも至近距離で捉えることができるため、誰がどこにいるという、より正確な情報を把握することができているようです。

――情報戦が明暗を分けている?

 そうですね。ウクライナは2014年のクリミア併合・東部の危機での経験を反省し、英米による兵士の訓練や軍備の拡充を進める一方で、有事において電気と電波の重要性を痛感しました。米テスラ社CEOのイーロン・マスク氏が人工衛星による通信網「スターリンク」を提供した、と報じられました。決して強い電波ではありませんが、常に維持されて政府も国民もリアルタイムで発信ができる。先ほど触れた一般人のドローンによる情報提供も、電波があるから可能になります。ゼレンスキー大統領もネットをフル活用しており、その演説に国民たちは励まされているはずです。ロシアもサイバー攻撃をかなり大規模に仕掛けていますが、思うような効果を上げていません。これも2014年以降、ウクライナがNATOとサイバー軍事演習を実施するなど重層的に対策をしてきたことで、うまく対応できていると見ています。

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プーチン大統領は自ら情報収集はしないし、インターネットを使わない