「父親は献金の使い道を知ったとき相当ショック受けていました。信者は献金の使い道を追及してはいけないんです。そのお金は天に返した、ささげたものだから。ところが実際は韓国にいる教会の幹部の懐に入っていたということが、2012年に教祖が亡くなった後、教会内部から漏れ出たのです(教団広報は「聞いたことがない」と回答)。でも、父親は文鮮明先生や教義は間違っていないと言う。必死で自分を納得させていたように見えました」

 母親はどうだったのか?

「母親はそういうことについて語らないんですよ。父親よりも教会にのめり込んでいるし、自分の非を絶対に認めないタイプなので、間違ったことをやったとは一切思っていない。だから、信仰は絶対にやめないんです」

■教団に対する「恨み」はある

 外山さんに旧統一教会を恨む気持ちはあるのか? たずねると、「それは、ありますよ」と語気を強めた。そして、「人生をめちゃくちゃにされた恨み」と、山上容疑者が語った事件の動機とまったく同じ言葉を口にした。

「親への恨みというより、教団への恨みですよね。だって、親もカルト教団につけ込まれた被害者だと思っていますから。教祖も憎いけれども死んでしまった。いまは教祖の妻がトップになっていますが特別な感情はありません。だから教団そのものが憎い。教団によって、どれだけ多くの2世の人生が狂わされてきたか。本当に怒りがわいてきます」

 ちなみに、外山さんが「祝福2世」と呼ばれるのに対して、山上容疑者は教団内では「信仰2世」となる。それは彼が生まれた後で母親が入信したことを意味する。

■山上容疑者と同化する苦しみ

 外山さんは「信仰2世の方の気持ちは十分にはわかりませんが」と前置きしたうえでこう語る。

「もともと裕福なご家庭で、不自由のない暮らしをしていたのが、お母さんが統一教会に入信したことでガラッと生活が変わってしまった。人格的にも変わってしまったであろうお母さんを見て、相当ショックだったんだろうと思います。もちろん、山上容疑者の行為は擁護できませんが、彼の気持ちに共感できるという2世は多いんです」

 それと同時に、大きなショックも受けているという。

「これほどの重大な事件に自分たちが育った教団が関わっているというのは、やはりショックでした。さらに、事件の容疑者が自分たちと似通った境遇で、2世たちはそれと同化するように苦しみを感じてしまっている。もしかしたら、ちょっとボタンを掛け間違えていれば、自分たちも山上容疑者のようになっていたかもしれない。私たち2世は今、そういう苦しみが大きくのしかかっています」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

※「後編」に続く。

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