水彩のイラストが写真以上に、日本の食べ物のおいしさを伝えるガイド本『日本のいいもの おいしいもの』。その著者、ケイリーン・フォールズさんが日本の食べ物に初めて触れたのは、ティーンのころだという。ジャニーズのポスターをミネソタ州の自分の部屋に貼り、ドラマのDVDを日本から取り寄せるほどの日本マニア。アメリカにはないたい焼きやシュークリームなどをドラマで見て、「いつか食べてみたい」と胸を膨らませた。
【イラスト】ケイリーンさんが描いた、老舗喫茶店の名物メニュー「ゼリーポンチ」
※記事<<空腹時閲覧キケン! 米国出身フードイラストレーターが描く「日本のおいしいもの」>>より続く
大学では日本語やデザインを専攻。クリエイティブ系の学生たちの間で、長い歴史に裏付けられた日本の文化や、ネオンサインがひしめくサイバーパンクな街など「ちょっと不思議な唯一無二の文化」を持つ日本は憧れの的だった。日本にやってくるときは、クラスメートの「おめでとう」の声に送られたという。
そんなケイリーンさんがもうひとつ、描く食べ物を決めるときのポイントにしているのは、日本文化として紹介できるものかどうか。
「オムライスひとつにしても、ビジュアルが派手でユニークなものより、日本文化が見えるノスタルジックなものを選んでいることが多い。しかもそんなオムライスを出すお店がおしゃれだったら、それが一番の理想ですね。アメリカにもおいしいものがたくさんありますが、日本のように食べ物の見た目の細部までこだわる店は少ない。日本の食べ物は繊細で、ファストフードひとつでもビジュアルがきれいですよね」
繊細な日本食は世界中で人気となっているが、日本に観光しに来たり、住んだりする外国人にも、食べ物から見える日本の文化を知ってほしいと、紹介文には英語も付けた。
この本で、ケイリーンさんが実現したことはもう一つある。食べては描き、描いては食べる夢のスケッチ旅行だ。行き先は京都。スケッチブックを手に2日間、ディープな雑貨や食のスポットなどを巡った。
「コロナもあって、ここ数年はモチーフになるのは東京近郊の食べ物ばかり。ここは1番有名な観光地をちょっと足したいと京都に行きました。おしゃれな喫茶店とかカフェとかも多いし、私が好きな懐かしいものだっていっぱいある。日本中においしい物はもっとたくさんあるのに、東京だけではちょっともったいないという気持ちもありましたね」