プライベートで旅行に行くときは、「せっかく行くんだから全部見たい」派。だが今回ばかりは、あちこちのお店でゆっくりしながらスケッチをする「一度やりたかったスケッチの旅」を実現した。
「京都は懐かしさやノスタルジックさがあって、日本のレガシーを感じさせてくれる街。お寺とか神社とかも好きですが、古いお店も多くて、とくに古い感じの喫茶店やカフェが、すごくいいと思いました。私はどこへ行っても、お土産を買いにアンティークの店に行くんですね。そこの土地の人が昔使ってたものを持って帰るという思い出がすごい素敵だなと思っているから。日本らしいアンティークを売っているお店にも行きました」
京都が、外国人観光客の人気観光スポットのひとつである理由を、ケイリーンさんはこう考えている。
「古い街が残っているからじゃないですか。どこの国へ行っても、古い街がどんどんなくなっているので。まず東京で今の日本文化を感じて、経験して、つぎに京都に行って昔の部分も経験できる……ま、そういうタイムスリップしたような感じにはなることが、人気の一つだと思いますね。日本はすごく古いものと、すごく新しいものが両方あって、私も初めて日本に興味持つようになったときに思ったのもそれなんです。京都のような古い町で、この道はどんな人が通ったんだろうとか、何百年も前に思いをはせながら観光するのが、すごく楽しいですね」
『日本のいいもの おいしいもの』には、昭和の銭湯をリノベーションしたカフェ「さらさ西陣」で銭湯時代から残るタイルのモザイク模様をスケッチしたり、「アウーム西木屋町」で旬の食材を使った手織り寿し(手巻き寿司)をイラストにしたり、ケイリーンさんならではのミニ京都案内ページが含まれている。京都ページにある1948年創業の喫茶店「喫茶ソワレ」の名物メニュー「ゼリーポンチ」など、水彩画にするとますます映えるスイーツも多い。
「京都だけでなく日本には、透ける食べ物が多いですね。アメリカにもゼリーはありますが、見た目を楽しむものではない。日本のそれは透けるところの色や反射もおもしろくて、そもそも水彩画に向いているモチーフ。ゼリーをはじめ、かき氷、寒天の和菓子、飴細工など、本ではまとめて“透ける食べもの”として紹介しています」