大学卒業後、福祉関係の専門職に就いた彩子さんは、教団への違和感を抱きながらも親には何も話すことなく、「婚前恋愛・性交渉は禁止」という教えもかたくなに守っていた。普通の恋愛の形ではなかったにせよ、彩子さんに男性の影があることを母親はすぐさま察知した。母親は激高し、顔を見れば彩子さんに耳を覆いたくなるような罵声を浴びせたという。

「詰問されるのは決まって『彼とどこまでしたのか』というストレートな内容ばかり。毎日『人間のクズ』『色情魔』とののしられ、『2世が堕落するなんてなんてことを……』と嘆き悲しんでいました。娘の悩みよりも堕落したことを嘆く母の姿を見て、これまでの自分の人生は何だったのだろうと無力感と虚無感しかありませんでした」

 彩子さんは「親による宗教の縛り付けは虐待です」という。

「親が信仰するのは自由です。でも、その親の子に生まれたからといって、生活様式や価値観まですべてその宗教で縛るのはおかしい。特に親の庇護のもとにいる幼い時期の子どもが、信じない自由を与えられないのは一番の苦痛です。苦しんで誰にも悩みを打ち明けられないでいる2世がいたら、何らかの形で力になってあげたい。私自身もツイッターやオフ会で救われたので、何かしてあげたいと思っています」(笠井千晶/AERA dot.編集部・作田裕史)