大学院生は少人数制授業で教員から毎回自分自身の考えを問われる。社会人を経て大学院に進む人もいて、幅広い世代に接する機会がある。同センターの紀國洋部長は、企業も文系院卒人材の能力の高さを理解し始めているとみる。
「入社時から大学院で培った力量を生かせる部署に配属されるケースをよく聞きます。大手ゼネコンに就職した経済学研究科のある修了生は経営戦略部門に配属され、新規事業や海外の市場開拓を担当しています。本社に配属され支部を統括する業務に就いたという修了生もいました」(紀國氏)
中本室長は、一見畑違いでも院卒が能力を発揮する場があると語る。
「文学研究科で東洋史学を専攻した院生が、2年前に独立行政法人水資源機構に就職し、水に関わる過去の災害記録を検証して防災に生かす方法論を追究しました。修士論文執筆の際に行った文献史料の調査をするなどの研究経験が生きました」
■修士論文で鍛えられた経験は強みになる
明治大学では大学院生のキャリアサポートプログラムを毎年行っている。研究職をめざす大学院生の支援とともに、就職希望者のためにインターンシップ準備講座やオンライン模擬集団面接などを実施する。
同大学就職キャリア支援事務室の小林宣子事務長は「院生が学部生と比べて就職に不利とは感じません」と話す。
「採用面接の際に研究内容をきちんと話せば問題ありません。ものごとを深く研究して初めて見えてくる世界もあります。教員や学生同士のやり取りでコミュニケーション能力を養い、研究を通じて論理的思考を身につければ強みになります」(小林氏)
同大学大学院事務室の横内雄介氏は、「就職活動が早期化し、研究テーマが具体化していない段階でスタートするため苦労する院生もいます。研究活動と両立できるようにスケジュールを考え、専門分野以外の職種にも就職先が広がるようにしています」と説明する。ただ税理士や臨床心理士などの修了が資格取得の要件となる職種を別にすれば、文系の大学院の専攻は就職後の仕事に直結しないことが多いという。