取材した日に江島さんが滞在した逗子A邸。木のキッチンのカウンターに梁の露出した天井、ダイニングにはローテーブル。随所にこだわりが詰まっている
取材した日に江島さんが滞在した逗子A邸。木のキッチンのカウンターに梁の露出した天井、ダイニングにはローテーブル。随所にこだわりが詰まっている

「僕の場合、究極、パソコンとスマホと財布があれば、たいていのことは用が足りることがわかりました。だから移動のときのパッキングもあっという間です。洋服はファストファッションだけ。シンプルにしておけば、着替えも最小限で済みますからね」

 暮らしを小さくし、どこに行っても最低限のものだけで暮らせることは、アドレスホッピングを楽しむひとつのテクニックであることは間違いない。

 その日にどんな人が何人、自分と同じ家に滞在するのかは当日までわからないのだが、それもまた、一期一会の楽しさとなる。

「みんなが集まって、顔合わせをして、じゃあ何か食べに行こうか、とか、キッチンがあるから一緒に料理をしようか、など、その場で決まっていきます。そのへんのことは、家守さんが仕切ってくれるので、特に不安はありません。ときに顔見知りがいることもあって、旧交を温めることもあります。まるで疑似家族のようで、居心地がいい。人間って、こうした関係性のなかで育っていくことが本来の姿なんじゃないかなって思うんです。ADDressではそれができる。会員にしろ、家守さんにしろ、こんな新しいサービスに飛びつく人だから、皆さんかなり個性的。話をするのが本当に楽しいし、刺激的です」

清潔感が漂う逗子A邸2階の洋室。江島さんは取材の日、この部屋に泊まった。野外研修のファシリテーター資格を持つ家守とはあっという間に意気投合
清潔感が漂う逗子A邸2階の洋室。江島さんは取材の日、この部屋に泊まった。野外研修のファシリテーター資格を持つ家守とはあっという間に意気投合

 江島さんの場合、会員同士の横のつながりもできており、「あの家、良かったよ」と聞けば、そこが次の目的地になる。取材の日は1週間をかけて藤沢、逗子、南伊豆を順々に巡っている途中。ひとつの家に2日ないし3日。どこを訪れても、観光はほとんどせず、次々に出会いを重ね、豊かなときを過ごしていた。

 ADDressの家はリノベーションされた古民家が多く、都会暮らしに慣れている人には多少不自由なこともあるが、そこもまた魅力。

「確かに、窓が開けづらい、お湯が出ないなど、家によって多少のトラブルはあります。僕の場合、鍵が開かなくて家に入れなかったということも(笑)。でも、そういうことさえ楽しんじゃうんです。こういうトラブルをストレスに感じてしまう人には難しいかもしれないけど、変化を求めている人にとってはまたとない体験になると思いますよ。家はどんどん増えていますが、最初のころはエリアにばらつきがあってね。ずっと名古屋周辺に拠点がなくて、移動が長くなるので不便だなって思っていたんです。で、『中部エリアに家をつくってほしい』とリクエストを出していたら、本当につくってくれたんです。会員の声をきちんと聞いてくれる体制があるんだと実感できたのがうれしかったし、これからも安心して利用できるなと思いました」

(構成/生活・文化編集部 清永 愛)

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