6)国内での大規模な統計調査データはないが、症例報告は多く、一般社団法人日本腎臓学会が注意喚起している。
つまり、PPIは発売後20年近く経ち慢性腎臓病症例が増加するにつれ、ようやくその意外な副作用が認識されるに至ったわけです。また、論文によれば、間質性腎炎は、表には出ないものの、わが国の34万人を上回る透析患者の増加に少なからず影響を与えている疾患であることは疑いないということです。
■圧倒的に多い後発医薬品 その安全性は大丈夫か
多くの医薬品が上市されていますが、冒頭に述べたとおり、その多くは後発品です。今回経験した副作用の原因薬剤はラベプラゾールナトリウムです。それ以外にもPPIはオメプラゾール、ランソプラゾールといった薬があります。それらの薬にも、後発品が数多く存在しています。
健康を守る医薬品は、厚生労働省の認可を得て上市されているはずなので、先発品、後発品を問わず臨床効果は同等で安全と誰もが考えます。しかし、後発品の服用によって副作用を経験すると、後発品(先発品も)の安全性は大丈夫なのか、先発品と後発品に違いはないのか疑問に思ってしまいます。以下に疑問点を整理してみましょう。
1)経験した副作用の原因薬剤は後発品。では先発品ではどうなのか。先発品を服用するわけにはいかないので、その違いは全く分かりません。先発品と後発品の副作用の違いに関するデータが知りたいところです。
2)そもそも後発品の臨床試験は実施されているのか。答えはNOで、薬剤が血中に移行し全身分布する医薬品に関しては、残念ながら臨床試験は行われていません。1980年代前半までは、後発品も先発品と同様、臨床試験が義務付けられていましたが、1984年に米国において、後発品の簡略承認申請を認める法律(ハッチ・ワックスマン法)が成立し、これが世界的なスタンダードとなっています。
3)後発品については臨床試験の代わりに、溶出試験と生物学的同等性試験が義務づけられています。溶出試験とは、水または胃液や腸液等と同じpHの試験液を入れたガラス容器内の温度を37度に保ち、錠剤やカプセル剤の溶け方を調べます。生物学的同等性試験とは、健常者に後発品と先発品を同じ量だけ投与し、血中濃度の推移を比較することで行います。
しかし、この二つの試験で十分なのでしょうか。臨床試験をすべきではないでしょうか。