習慣的な喫煙や大量の飲酒、むし歯や合わない入れ歯による慢性的な刺激、口腔内の不衛生などが原因になると考えられている。高齢化に伴って増加傾向にあるが、全てのがんに占める割合は1%程度で、頻度は高くない。口の中に腫瘍があっても、良性の場合も多い。
粘膜にできる代表的な良性腫瘍が「乳頭腫」や「血管腫」で、痛みはないが、ざらざらとした違和感があることがあり、放置すると増殖する。このため、基本は手術で切除する。「エナメル上皮腫」など、あごの骨に腫瘍ができる場合もある。粘膜にできる腫瘍に比べて見つけにくく、むし歯の治療などでパノラマX線写真を撮った際に偶然見つかる場合も多い。大きくなると神経に影響を及ぼし、しびれやまひなどの機能障害が起きる。
分泌物が袋状にたまるのう胞ができることもある。代表的なのが、あごの骨にできる「顎骨のう胞」や唾液腺にできる「粘液のう胞(がま腫)」だ。放置すると大きくなるため、手術で摘出する。慶応義塾大学病院歯科・口腔外科准教授の角田和之歯科医師はこう話す。
「痛みや腫れ、しびれが続く場合、できものが繰り返しできたり、治りにくかったりする場合は治療が必要なことが多いので、放置しないほうがいいでしょう。発熱、皮膚や胃腸の症状など、全身にも症状がある場合も、注意が必要です」
(文・中寺暁子)
※週刊朝日2022年8月5日号より