国軍の完全な支配下にあるミャンマー中央銀行を使い、企業が得たドルからチャットへの強制両替を指示。その期限も、昨年の9月は4カ月以内、10月には30日以内、今年の4月には1日以内と短くなった。そして今回、強制両替の事後通告になった。

 今年6月には国軍幹部が中央銀行の要職を占めたようで、考えられない愚策も次々に発表されている。

 そのひとつが海外からの融資の返済停止。つまり以前に受けた融資を踏み倒せという指示を企業に出した。これを行えば、ミャンマーの企業の信用はなくなる。

 日系企業をはじめとする外資系企業は、この強制両替を免れているところも多いようだが、執行は時間の問題ともいわれる。

 ドル不足が及ぼす市民生活への影響も大きい。燃料が買えないため、ガソリン代が高騰。クーデター前はリッター700チャットだったガソリンが、先月は2000チャット。閉鎖するガソリンスタンドも多い。タクシー代は1・3倍から1・5倍に。バス会社もガソリン節約のために減便。毎朝、猛烈なラッシュがバス停で繰り広げられるようになった。

SNSに投稿された朝のラッシュ風景
SNSに投稿された朝のラッシュ風景

 Aさん(27)が利用する通勤バスは便数が半減したという。農家は肥料やガソリンが手に入らず、来年は食糧難に見舞われるともいわれている。

 オンラインメディアのMYANMAR JAPONは、

「Radio Free Asiaは、世界銀行は7月21日、軍評議会統治下のミャンマー経済が破綻(はたん)する可能性があると警告した」

 と伝えている。

■下川裕治(しもかわ・ゆうじ) 1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。

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