内向の初期である90年代にはタレントの桜田淳子や山崎浩子らの『合同結婚式』がワイドショーで取り上げられたが、それらは教団を追及、糾弾するという姿勢では報道されなかった、と藤森さんの目には映った。

「内向の時期に入った彼らが何をやったかというと、真面目な善男善女を洗脳して『かたい信者』にしてしまうんです。教団に引っ張り込む騙しの手口はそれほど変わらないんですが、信者として『もう大丈夫だな』と判断したところで、全財産を献財させる」

 そのやり口は、かつてオウム真理教が信者に対して行ったことと、ある面ではよく似ていると藤森さんは言い、こう続ける。

「今回の(安倍元首相銃撃)事件でぼくがハッとしたのは、山上容疑者のような『2世』の問題です。それまでまったく気がつかなかった」

 霊感商法が下火になったとき、旧統一教会に対する追及を止めたことに対して「あれでよかったのかな、という思いをいま持っていることは事実です」と吐露する。

「原理運動や霊感商法のときは、被害者がやがて加害者になった――そういう構造だったんです。ところが2世は純粋な被害者です。教団に洗脳された親のもとで育った子どもたちがあんな苦労してるなんて、思いもしなかった。この2世の問題を放置してきた社会やメディアも、ある意味、加害者側にいると思います。そのことを今回の事件で一番強く感じています」

■瞬間風速で終わらせない

 最後に、7月11日に旧統一教会が会見を開いて以降、マスコミの報道姿勢についてはどう感じているのか?

「この問題を瞬間風速、一過性で終わらせるのではなくて、きちんと伝えようとする姿勢が伝わってきます。おせじではなくて、本当にそう感じています。特に日本テレビが頑張っている。『情報ライブ ミヤネ屋』とか。それからTBS、テレビ朝日も頑張っている。でも、なんといっても偉いのは、ジャーナリストの鈴木エイトさんです。彼は、このような事態にならない間も1人で取材を続けてきた。その姿を見ていると、ウォッチし続けることはつくづく大切だと改めて思う。敬意を持って彼を迎え入れ、伝えようとする番組の姿勢も立派だと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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