専門的な医療機関では、最終的に組織や細胞を採取し、がんの有無を確定する。
治療は、がんとその周囲を切除する手術が基本となる。ほかの多くのがんと同様、早期で手術できれば治りやすく、切除範囲も小さくてすむので、機能や見た目への影響が少ない。
口にできるがんは口腔がんと呼ばれ、できた部位によって舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、下歯肉がん、上歯肉がん、硬口蓋がん、口唇がんに分類される。いずれの場所もほとんどが粘膜組織から発生する「扁平上皮がん」だ。なかでも多いのが舌がんで、口腔がんの5割以上を占める。舌の側面にできることが多く、上部分にできることはほとんどない。
口腔がんは、高齢化に伴って、増加傾向にある。発症のリスクとなるのが、習慣的な喫煙や大量の飲酒、むし歯や合わない入れ歯などによる慢性的な刺激、口腔内の不衛生などだ。吉本医師は、次のように懸念する。
「食習慣の影響で、若い世代ほどあごが小さい傾向があります。歯が過密状態になって内側に倒れると、舌に当たり続けることがあります。その部分が慢性的な炎症となり、がんのリスクとなるのです。また、むし歯を放置すると、削れた部分の歯が尖って舌を刺激するため、同様のリスクがあります」
歯並びが悪い人、むし歯がある人は特に、がんの予防という観点からも歯科医院でのチェックが必要だ。
(文・中寺暁子)
※週刊朝日2022年8月12日号より