ボクシング界の“カリスマ”辰吉丈一郎は52歳となった今でも現役にこだわり続けている。先日公開された「Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair」のインタビューでも再びリングに上がる決意を語り話題となった。
元JBC(日本ボクシングコミッション)事務局長で現理事長付顧問の安河内剛氏は、長年に渡ってボクサー・辰吉と接してきた。技量や人間性の良さを熟知しているが、コミッションの立場として「ライセンス発行を認める気持ちは一切ない」と語る。「仕事や立場がなければ辰吉ファン」という安河内氏の複雑な胸中に迫った。
辰吉の現役続行の発言は安河内氏を驚かせた。十数年前、マウリシオ・スライマンWBC会長(当時理事)が、辰吉に対し遠回しに引退を勧めたことがあった。長い時間が経過したが、当時と全く同じことを語っていたからだ。
「会長と私と辰吉の3人で会話をした。『あなたはWBCを代表する偉大なチャンピオン。過去の実績や名声も十二分にある』と遠回しに引退を勧める話をしました。会長は優しい男なので辰吉のプライドを最大限に尊重してくれた。『そんなもんいらん。グリーンベルト(WBCのチャンピオンベルト)を巻くことしか考えていない』と即答しました」
「インタビューを見て驚きました。もう1度、WBCのチャンプになることしか考えていない。もちろん我々コミッション側は『ボクサー・辰吉』を認められない。でも彼はまだ夢を持っています。そこに関しては尊敬しかありません」
「浪速のジョー」と呼ばれ、ボクシング界を超越した人気と知名度を誇ったスーパースター。WBC世界バンタム級王座を3度戴冠した技術とファイティングスピリットは今でも記憶に残る。しかし現在は規程による引退選手扱いで、今後も公式戦のリングに立てる可能性はゼロに近い。
「全盛期から見てきましたが、客観的に見て下降線を辿っていました。(現役を続けることは)ボクサーと今後の人生の両方でマイナスしかない。網膜剥離になったこともあるし、今後は1発もパンチを受けて欲しくない。そこは冷静かつ正確に判断しなくてはいけない部分です」