補助的に抗うつ薬や抗不安薬といった薬物療法を実施することもあります。

 治療は通常は通院で行いますが、著しい低体重や合併症がある場合、食事を全くとれない場合、外来治療では体重の回復が難しい場合、精神的に不安定な場合などは、入院で治療することがあります。

 家族に摂食障害に対する理解と協力があると治療を進めやすくなるので、家族への説明やアドバイス、支援も行われます。

イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より

【大切なこと】

 摂食障害の多くは、ダイエットをきっかけに発症します。体重をうまく減らせると、一時的に達成感や充実感が得られるので、さらに極端な食事制限や偏った食事を追求する――といった悪循環に陥ります。その結果、極度の低栄養状態になり、誰が見ても危険だという状態になっても、自分ではまだ太っている、もっとやせなくては、と思い込んでいる人が多いのです。

 無理なダイエットをした反動で過食に転じることもあります。拒食と過食の繰り返しで病気が長期化してしまう場合も少なくありません。

 摂食障害を治療するには、家族や周囲の理解とサポートが不可欠です。本人の話をじっくり聞いて、気持ちを受け入れ、その上で心配していることを伝えて良い方法を一緒に考えることが大切です。

 しかし、極端な低栄養状態に陥っているときは、本人が嫌がっても病院を受診させる必要があります。

 根気強く患者さんと寄り添って治療に臨んでいただくことが、本人への何よりの支えとなります。

『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)
『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)

※『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より抜粋

水野雅文(みずのまさふみ)

東京都立松沢病院院長 1961年東京都生まれ。精神科医、博士(医学)。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。イタリア政府国費留学生としてイタリア国立パドヴァ大学留学、同大学心理学科客員教授、慶應義塾大学医学部精神神経科専任講師、助教授を経て、2006年から21年3月まで、東邦大学医学部精神神経医学講座主任教授。21年4月から現職。著書に『心の病、初めが肝心』(朝日新聞出版)、『ササッとわかる「統合失調症」(講談社)ほか。

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