それからアメリカを行ったり来たりして、ジムの器具でのトレーニングを見よう見まねで覚えてからだを作るようになったんだ。ただ、当時の全日本プロレスは、マシーントレーニングは邪道とは言わないけど、好ましくないものとされていた。ジャイアント馬場さんもジャンボ鶴田も、走ったり、野球やバスケットボールでナチュラルに使える筋肉をよしとするような風潮があったからね。だから全日本の道場にトレーニング器具は多少はあったけど、どれも使った形跡がなくてほとんど錆びついていたよ。

 それから俺がマシーントレーニングをするようになって、ようやく他のレスラーも始めるようになった。俺の下の世代の小橋(健太)とか川田(利明)は、いいからだをしているだろう。全日本がウエイトトレーニングをするようになったのは俺がきっかけなんだ。とはいえ、馬場さんが亡くなってから知ったんだけど、自宅マンションの地下にはトレーニングマシーンがあって、ホテルのジムでもトレーニングしていたんだって! そりゃそうだよね。じゃなきゃあのからだとコンディションは保てないもんね。

 プロレスラーのトレーニングと言えばスクワットだって? たしかにスクワットは心身の鍛錬になる。同じ動作を延々と繰り返しながら、頭ではいろいろなことを考え、自分の気持ちや今後のことなどを整理するのに大切なトレーニングだ。ところが俺は「相撲で13年間四股を踏んでいたからスクワットなんてちゃんちゃらおかしい」とやらなかった(苦笑)。もう少し、やっておくべきだったかな……。

 プロレスはテレビで見たことしか知らなかったから、スクワットもそうだけど、腹筋やブリッジ、首の運動など、あんなに練習しているとは思ってもみなかった。テレビで見たような試合の動きをなんとなくやればいいんだろうって思っていたからね。特にブリッジは壁から30センチくらいの場所に背を向けて立って、そこから後ろ向きに壁に手をはわせて徐々にブリッジをして、壁に鼻がつくまでやらないといけない。これが大変だったね。アメリカに行ったときに数カ月かけてようやくできるようになった。アメリカ時代はそれだけ暇だったと言えるが(笑)。

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プロレスラーで練習熱心だったのは?