アメリカでは、プロレスが下手だと試合を組んでもらえないし、下手なヤツを出すとサーキットで稼ぎに来ているレスラーの食い扶持が減るからね。そこはシビアだし、トレーニングしてくれたドリー・ファンクもそこまでは面倒を見てくれない。プロレスは練習で技を何度も食らって、自分のからだで会得するしかないから、とにかく数をこなすことだ。ボディスラムもバックドロップもなんでも受けながら覚える。

 だから、プロレスラーは歳を取るとからだにガタがくるんだよね……。特に頸椎、腰椎、足首。若いころはゆるんだ関節を筋肉でカバーできていたけど、筋肉が落ちてくるとどうしようもない。今、俺も自由がきかないからだになって、ハードなプロレスをやってきたんだなとつくづく思うよ。若いころは試合が終わってすぐに「さあ、飲みに行くぞ」と街に繰り出していたけど、あのとき少しでもアイシングしたり、なにかしらケアをしておけば……と思わなくもないなぁ。

 プロレスラーで練習熱心だったのは小橋や大仁田厚が思い浮かぶが、一番はなんといってもアニマル浜口さんだ。しかも変わったトレーニングをするよね。朝起きたら太陽に向かって大声を出して気を吐いて、大声で笑うのは健康にいいって。「わっはっは!」とあの笑い方だろう。自分にとっていいと思ったものは積極的に取り入れるし、自分に正直に、まっすぐ生きている人だね。

“面白い元気なおじさん”という印象が強い一方で、浜さんは実はとてもシビアで厳しい人でもある。プロレス界では浜さんの怖さは有名で、特に物事に対して短絡的な考え方をしているとすぐに雷が落ちる。自分の「アニマル浜口ジム」でも若い人たちに生き方を間違わないように厳しく指導して、礼儀作法をしっかり身に着けさせている。プロレス界では「アニマル浜口ジム出身」というだけで一目置かれるんだ。浜さんからやかましくしつけられているからね。そんな厳しい浜さんも、奥さんの初枝さんは怖いらしい(笑)。

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ベロベロの浜さんがひと声でシャキッと!