絵:チャンス大城
絵:チャンス大城

 良ちゃんは、その階段のドアの鍵も持っていってしまったので、全裸にされた居酒屋からなんとかアパートの前まで帰ってくることはできたものの、内付け階段の中に身を隠すことすらできなかったのです。

 仕方がないので、とりあえずアパートと隣のタバコ屋の隙間に入って、状況が好転するのを待つことにしました。

 しばらくすると、大学生らしい若者4人のグループが歩いてくるのが見えました。彼らもきっと酒を飲んでいたのでしょう。ご機嫌で大声を上げています。

「どうしょう?」

 一瞬迷いましたが、やるしかありません。

 僕は両手でちんちんを隠しながら、道路に躍り出ました。

「すみません、服貸してもらえませんか?」

 4人組は、

「わっ」

 と声をあげました。

「決して怪しい者ではありません。パンツとTシャツだけ、ちょっと貸してもらえませんか?」
「おまえ、ターミネーターか!」

ひとりがそう叫ぶと、4人はダッシュで逃げていってしまいました。

 再び隙間に戻って対策を考えましたが、ぼやぼやしていると夜が明けてサラリーマンたちが出勤する時間になってしまいます。その前に、なんとかして不動産屋まで行って合鍵を借りないと、僕は間違いなく警察に通報されて留置場に入れられてしまうことになるでしょう。

「どないしょう?」

 必死で考えていると、アパートのはす向かいに電気屋があるのを思い出したのです。電気屋の前には、毎日、テレビや冷蔵庫が入っていた大きな段ボール箱が出してありました。早朝に業者が取りにきますが、深夜ならまだあるはずです。

「あの段ボール箱もらって、乳首と股間だけ隠れる服作ろう。そうすれば、全裸ということにはならんやろう」

 再びちんちんを手で隠しながら電気屋の前まで走ると、大きな冷蔵庫の段ボール箱が1個だけ出してありました。

「これや!」

 冷蔵庫の段ボール箱は、中に入っても十分に隠れることのできる大きさです。しかも取っ手がついているので、そこを持てば段ボール箱ごと移動することができそうです。

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