プールだけじゃない。猛暑がおさまる秋は行楽シーズンだが、不特定の人が出入りするお祭りや花火大会、テーマパークや遊園地、博物館、さらに親子連れが集まるキャンプ地など“危ない場所”を挙げればキリがないと小宮教授は指摘する。

 新型コロナの感染対策で、屋内での催しは入場制限がなされている。しかし、人気の企画展が開催されている博物館やテーマパークでは、通勤ラッシュ並みの人混みだ。

「そうした機会を狙って、子どもを触る犯罪者もいます」

 警察庁の統計によると、殺人や暴行、傷害を含む犯罪被害者となった未就学児と小学生の子どもの数は、一昨年、昨年と7000人を超えている。なかでも強制わいせつの被害者は700人近く、ほぼ1割。

 筆者も警視庁が地域の犯罪発生情報をメールで知らせてくれるサービスに登録しているが、「子どもが不審者による公然わいせつなどの被害に遭った」「不審者につきまとわれた」といった発生情報を知らせるメールの数が、想像以上に多いことに驚かされる。

「犯罪から子どもを守りたかったら、まずは『怪し気に見える人に対する用心』という発想を捨てることです」

 どういうことか。

 小宮教授によれば、罪を犯そうと目論む人間は子どもが思わず警戒心を忘れるような「優しい人」「普通の人」「面白そうな人」に見えるよう、必死で試行錯誤を重ねていると言う。

 たとえば、6月には大阪府で17歳が逮捕された事件が起きた。

 男子高校生が、路上にいる小学生の女の子に親切そうに声をかけた。

「お尻に砂がついているよ」

 そして、手を下着の中に入れるわいせつ行為を以前から繰り返していたのだという。

■「虫歯を治してあげる」とディープキス

 子どもを車やトイレ、階段の踊り場に連れ込んで触る類いの性犯罪は後を絶たない。大人から見れば、なぜ騙されるのかと不思議に思うだろう。

 しかし、小宮教授によれば、未就学児から小学5、6年生までの事件を調べると、およそ8割の子どもは騙されて連れ込まれている。

「虫歯を治してあげる」

 と言われてディープキスをする手口もあったという。

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