人の多い場所で連れ去られ殺害された事件は、決して少なくない。

 たとえば11年に本市内のスーパーで、3歳の女の子が障害者用トイレに連れ込まれ殺害された事件がある。

「スーパーには防犯カメラが設置されていたにもかかわらず、犯人は4時間近く、スーパー内で子どもを物色していたのです」

 人通りの多い道や場所では、逆に注意や関心が分散する。さらに、他人に無関心となる「傍観者効果」が生まれるため、見えにくい場所になる。

■携帯のGPSは「防止」にはならない

 また、昼間だから安全なわけではない。

 先の例もそうだが、子どもの連れ去り事件は、登下校中など明るい時間に発生しているケースが少なくない。

 18年に、新潟市で下校中の小学2年生の女の子が車に連れ込まれ、殺害された事件があった。当時23歳だった男が、わいせつ行為に及んだ末に殺害し、遺体を線路に遺棄して逮捕されたむごい事件だ。

「これまでに起きた事件の傾向を分析すると、暗い道よりもむしろ明るい道のほうが事件は多い。つまり、明るい時間だから人が多い場所だから安全、といった親の思い込みこそが危険なのです」

 では、子どもを守るために何が必要なのか。

 小宮教授は、レジャー施設や遊び場を運営する日本の企業や自治体が、リスクマネジメントの基本である「犯罪機会論」の概念を取り入れることだと話す。

 たとえば、次のような方法もある。

・レジャー施設では子ども向けエリアと大人向けエリアを明確に分ける

・遊具を一カ所に集めてフェンスで囲み、犯罪者が「入りにくい場所」をつくる

・子ども向けエリアに植える植物などは控え目にして、「見えやすい場所」にする

 GPS機能のついたキッズ携帯を子どもに持たせる親もいるが、これは防犯対策になるのだろうか。

「GPSやスマホを持たせても犯罪に巻き込まれた場所しかわかりません。子どもがGPSを持っているのを犯罪者も知っているので、すぐに捨てられます」

 犯罪を抑制する社会インフラが整うまでは、親は子どもをなるべく一人にせず、そばで見守るしかない。親が目を離さないことで、子どもがいる場所を「不審者が入りにくく、見えやすい場所」とするしかないようだ。

(AERA dot.編集部・永井貴子)

[AERA最新号はこちら]