他にも1年で退団した選手は多く、昨シーズンからの加入組ではアルカンタラ、ロハス・ジュニア(ともに阪神)、エチェバリア(ロッテ)などは今年もプレーしているものの、それほど目立った成績を残すことができていない。唯一例外と言えるのがヤクルトで、サイスニード、サンタナ、オスナの3人は今年も主力として活躍しており、他球団と比べて大きなアドバンテージとなっていると言えそうだ。

 今年もメジャー通算52勝の実績を引っ提げソフトバンク入りしたチャットウッドが早々に退団。同じくメジャーでの実績を買われ高額な年俸で入団したガルビスもここまで戦力となっていない。野手では冒頭で触れたマクブルーム、投手ではゲレーロ(ロッテ)などはチームに欠かせない戦力となっているが、大成功と言うのは少し寂しい成績という印象だ。以前からメジャーで結果を残した選手が日本で苦労するケースは少なくないが、その割合が増えていることは間違いないだろう。

 このような事態となっている原因だが、一つ大きいのはやはりコロナ禍によって生活が大きく制限されていることではないだろうか。徐々に緩和されてきているとはいえ、家族がなかなか来日することができず、また自由に外出できないことでストレスを溜め込んでしまうケースは多いという。

 球団としてもあらゆるバックアップをしていることは多いが、これまでと同じやり方だけでは不足している部分もあるはずだ。世界的に不安が広がる中で、祖国を離れてプレーすることの難しさを感じた選手も多かっただろう。ファミリー体質で知られるヤクルトが成功しているのはその裏返しとも言えそうだ。

 過去2年間はフリーエージェントで移籍する選手が少なく、だからこそ即効性のある補強としては外国人選手の価値がより高まってくることとなる。選手のスカウティングにおいてはより慣れない生活への順応性を見極めること、そして来日した後にプレーしやすい環境をどう整えていくかということが今後より重要になってくるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

[AERA最新号はこちら]