そのガウン、そんなにたいそうなものだと知らずに俺はモーテルに置きっぱなしにしてきたんだ。そうしたら馬場さんが「おい、天龍、ガウンはどうした!?」って怒ってね。初めて「ああ、この人はこんなに怒る人なんだ」って思ったよ(笑)。それ以来、馬場さんに怒られた記憶がないから、よっぽどだったんだね。そのガウンもそれ以来見ていないけど……。

 当時の俺は、プロレスで失敗しちゃいけないという思いが強くて、一生懸命やっているつもりになっていた。だから、試合でジャンボなんかに余裕で相手にされると癪(しゃく)に触って「おい、こっちはガンガンやっているんだから、お前もちゃんと受けろよ!」と怒ったりしてたね。

ジャンボは運動能力が高くて、どんなことでも簡単にできちゃうから、それが泥臭い俺には一生懸命やっているように見えなかったんだ。当時は自分のことで精一杯で、ジャンボのそういうところがちゃんと分かってなかったね……。今思えば、華麗なジャンボの動きに、俺だけ下駄をはいてぎこちない動きで戦っていたようなもんだ。三沢(光晴)やジャンボは才能があって華やかだけど、川田(利明)や小橋(建太)は俺と一緒のタイプだから好感度が上がったんじゃないか(笑)。

 試合中にブチギレられて印象的なのはやっぱり、1988年のスタン・ハンセン失神事件だ。俺と阿修羅・原で延髄斬りを仕掛けたら、俺の足がちょうどハンセンのアゴに入っちゃって、ハンセンが脳震盪(しんとう)を起こしちゃった。目が覚めたハンセンがブチギレて、暴れる、暴れる! あれはさすがにビビったね! 試合後も控室に俺を探しに来て「特捜最前線」顔負けの大捜索をしていてね。

そこは何とか逃げられたんだけど、そのすぐ後の横浜の試合で俺とハンセンを平気でマッチメークするんだから、馬場さんも人が悪いよ。予想通り、その試合でも俺はボコボコのけちょんけちょんにやられて。今度は俺がブチギレてハンセンの控室まで行ってやりあったっけ。最後は殴り合って、水ぶっかけられて「F〇〇k You!」と罵られて、でもそれでハンセンもすっきりしたみたい。

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上田馬之助がコップをかじった!