■地元を拠点とする企業との連携が多い
東北大電気通信研究所では、インタラクティブで柔軟なデジタル画像の可視化技術を開発した。これは多数の写真を画面上に同時に表示する際、個々の写真に「大きくなること」と同時に「重ならない」「関連するものが集まる」などの要求事項を与えて、自律的に動きのある画面を見せるものだ。日本文教出版に技術移転され商品化されている。
また、同大大学院医学系研究科は、わかもと製薬と抗酸化サプリメントの開発に成功している。
大学は地元を拠点とする企業との連携にも熱心だ。
名古屋大は、トヨタ自動車関連会社と自動運転技術の共同研究開発に取り組んでいる。これまで名古屋大とトヨタ自動車は、マルチメディア機能と車両制御機能の開発で連携を強化してきた。昨今、高度な技術発展を遂げた運転支援、カーナビゲーションなどのシステムである。
広島大工学部は、自動車メーカーのマツダの技術研究所と研究協力をしている。共同研究講座として内燃機関研究室、空気力学研究室、先端材料研究室、藻類エネルギー創成研究室などを作り、次世代自動車技術に関する「エネルギー創出」「効率的利用」「走る歓び」を探っている。
■学生にとっても実践の場に
産学連携は、大学との共同研究相手の電機、機械、製薬、食品などの業種が多い。しかし、プロスポーツチームもある。
筑波大と鹿島アントラーズ(Jリーグ)は2013年からアカデミックアライアンス(学術的提携)を締結し、 地域連携及び地域活性化に向けた共同研究を行っている。大阪大は、ガンバ大阪の本拠地スタジアム(パナソニックスタジアム吹田)の建設にあたって、最先端技術を搭載したソーラーパネルなどを開発した。もともと大阪大とガンバ大阪の後援企業であるパナソニックは縁が深く、大阪大パナソニック基盤協働研究所があり、双方の親和性はやたら高い。
産学連携は大学教員だけの取り組みではない。学生も関わっている。
信州大繊維学部の学生グループは、千曲観光(長野県佐久市)、米持製菓(同飯山市)と共同で、桑の葉を練り込んだかりんとう(商品名=「くわりんとう」)を作り、販売している。
大学と企業の出合いが、私たちの生活を豊かにする。産学連携に注目しよう。
※AERAムック『就職力で選ぶ大学 2023』より