最下位に沈む中日は、CS圏内の3位進出が厳しい状況に追い込まれている。
低迷の大きな要因は貧打に尽きるだろう。チーム総得点はリーグワーストの385点。計60本塁打と、ヤクルト・村上宗隆の55本塁打と5本差しかない。2ケタ本塁打を放っている選手は12本塁打のビシエドのみ。長打力がなければ、相手バッテリーは伸び伸びと投げられる。中日は昨季も本塁打数がセリーグ唯一の2ケタで69本塁打。本塁打が出ない理由のひとつに挙げられるのが、本拠地のバンテリンドームだ。
「球場が広い上に外野のフェンスが高いので、打球がなかなかスタンドを越えない。一方で、マウンドの土が硬くて傾斜があるので投手は角度が付く球を投げられる。いわゆる『投手天国』と呼ばれる球場で、なかなか得点が入らない。落合博満元監督が守り勝つ野球で黄金時代を築いた時に、『得点が入らなくてつまらない』と揶揄されましたがその指摘は酷に感じました。この球場で勝つには必然のスタイルだからです。打者は他球場なら本塁打になる打球も外野フライになるので、ミート重視の打撃にシフトする。和製大砲が育たないのは仕方がない部分がある」(スポーツ紙デスク)
その典型的な例が、伸び悩んでいるプロ11年目の高橋周平だろう。東海大甲府では高校通算71本塁打をマーク。甲子園出場は叶わなかったが、高校生日本代表で主軸を務め、「高校№1スラッガー」と形容された。中日、ヤクルト、オリックスがドラフト1位で競合し、抽選の末に中日へ。新人の時から逆方向にアーチを放つスケールの大きい打撃を見せていた。
当時の高橋を取材したスポーツ紙記者はこう振り返る。
「高校時代の金属からプロで木製バットに変わってもきっちり対応していた。飛距離は若手の中でも抜けていた。スイングスピードが速く、バットがしなるような打ち方をしていた。当時は線が細かったけど、身長が180センチあったし体ができ上がれば、打率3割、30本塁打を達成できる素材だと感じました」