「ラゲブリオ」と「パキロビッド」の使用状況の違い(表作成/岩下明日香)
「ラゲブリオ」と「パキロビッド」の使用状況の違い(表作成/岩下明日香)

――ワクチン接種を済ませた高齢者はどうでしょうか。

 コロナは年齢の高さが最も重症化リスクを高めることから、高齢者は十分にワクチンを接種していたとしても、処方の対象になると思います。薬によって、より重症化リスクを下げることができるでしょう。

――現在、承認されている2つの飲み薬「ラゲブリオ」と「パキロビッド」を比較すると、どちらがより効果があるのでしょうか。

 まだ2つの薬を直接比較した治験が十分ではないため、正確にはわかっていません。ただし、それぞれでプラセボ(偽薬)を使った治験では有効性が証明されています。医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に取り上げられた第3相試験(フェーズ3)の治験結果によると、「パキロビッド」は、プラセボと比べて、入院と死亡のリスクを約89%低減させる有効性が示されました。一方、「ラゲブリオ」は30%でした。こうした結果から、「パキロビッド」のほうが有効性は高いと推定されています。

 アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインには、コロナ患者の治療として、まずは解熱剤を投与し、その次に考慮すべき治療として「パキロビッド」が推奨されています。経口薬が飲めない患者もいるので、それが使えない場合は点滴薬の「レムデシビル」になります。そして、これらすべての治療薬が使えない場合に「ラゲブリオ」を使うという順番があります。

 しかしながら、日本では、「パキロビッド」よりも「ラゲブリオ」が多く処方されている実態があります。国は、「パキロビッド」を200万人分確保していますが、投与実績は約4万人しかありません。一方、「ラゲブリオ」は160万人分の確保量に対して、約56万人分を投与しています(2022年8月31日時点)。

――なぜ「ラゲブリオ」のほうが、日本では多く処方されているのでしょうか。

 まず、「パキロビッド」には、飲み合わせに注意が必要な薬がたくさんあります。そのため、医師がリスクを避けるために「パキロビッド」の処方を控え、飲み合わせにそれほど気をつけなくてもよい「ラゲブリオ」を選ぶ傾向があります。しかし、アメリカのガイドラインには、本当に禁忌すべき薬は2つ(リバーロキサバンとサルメテロール)しかないと示されています。

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副作用は下痢などの消化器症状