もうひとつの理由が薬へのアクセスです。「パキロビッド」の申請には似たような書面を2枚書かなければならず、診察しながら作成するのが大変なのです。一方、「ラゲブリオ」は簡単なので、忙しい医療現場にとっては「ラゲブリオ」のほうが扱いやすいのです。しかも、「ラゲブリオ」を処方している実績のある薬局が、「パキロビッド」を取り扱う現状があります。つまり、「ラゲブリオ」を出している薬局の一部でしか「パキロビッド」を扱っていないので、処方されにくくなっています。
しかし、患者目線に立てば、医師だけでなく薬剤師が飲み合わせを確認して、処方可能な患者には、有効性の高い「パキロビッド」のほうを検討すべきだとは思います。学会や厚生労働省が、有効な薬を速やかに処方するための体制を整える必要があります。
――コロナの飲み薬には、どんな副作用が懸念されているのでしょうか。
「ラゲブリオ」と「パキロビッド」に共通して、消化器症状の副作用が確認されています。気持ちが悪くなったり、下痢をしたりなどです。ただ、それほど高頻度に副作用が出るわけではありません。
また「ラゲブリオ」については、胎児の骨格形成に異常をきたす「催奇形性(さいきけいせい)」の懸念があるため、妊婦への使用は禁止されています。今後、軽症の人に広く処方されるようになれば、妊娠可能年齢の人が服用する可能性も出てくるでしょう。アメリカでは、女性に限らず、男性も服用してからしばらくは避妊が推奨されています。
繰り返しになりますが、妊娠可能年齢の若い健康な人であれば、重症化リスクは低く、自然と治ることのほうが多いため、「ラゲブリオ」を処方するのは現実的ではありません。患者も医師に求めるべきではないでしょう。
「パキロビッド」には、服用後に症状が再発し、ウイルス検査で再度陽性になるリバウンドが極めてまれに報告されています。ただ、リバウンドで重症になることはほぼありません。