16日から一般流通された新型コロナの飲み薬「ラゲブリオ」
16日から一般流通された新型コロナの飲み薬「ラゲブリオ」
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 米製薬大手メルク社が開発した新型コロナの飲み薬「ラゲブリオ」(一般名:モルヌピラビル)が16日から一般流通された。これまでは供給量に限りがあり、必要とする医療機関に国が無償配布していたが、メルクの日本法人MSDの発表によると、生産体制が整い、安定供給の見通しが立ったことから一般流通が始まった。これにより患者にも処方されやすくなるが、どんな症状の患者が処方の対象で、どんな副作用があるのかなどは気になるところだ。また、承認済みのもうひとつの飲み薬である米製薬大手ファイザー社製の「パキロビッド」(一般名:ニルマトレルビル錠/リトナビル錠)とは何が違うのか。医師と患者が留意すべき点を、感染症専門医で埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科の岡秀昭医師に聞いた。

【表】承認済みの飲み薬「ラゲブリオ」と「パキロビッド」の違いはこちら

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――コロナの飲み薬は、どんな患者に処方されるのでしょうか。

 現在、日本で承認されているコロナの飲み薬は「ラゲブリオ」と「パキロビッド」の2つです。しかし、感染したすべての患者に処方されるわけではありません。この2つの薬は、ワクチン未接種者を対象に治験が行われていましたが、今では多くの人がワクチンを接種しているため、ワクチン接種の有無にかかわらず、医師の判断によって、基礎疾患のある軽症・中等症の人を対象に処方されるかと思います。

――これらの薬の治験は「ワクチン未接種者」が対象だったということは、ワクチン接種をしていれば、飲まなくてもよいということでしょうか。

 前提として、ワクチン接種を済ませ、基礎疾患のない、60歳未満の人は、ほぼ重症化することがないとわかっています。それらの健康な人はこの薬を飲まなくても自然に治る場合がほとんどのため、ワクチン接種の有無にかかわらず処方はされないと思います。飲み薬があるからといって、ワクチン接種をしなくてもよい、というわけではありません。飲み薬に期待するよりも、先にワクチン接種を済ませておくことが大切です。

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リスクを避けたい医師